リクルートのDNA―起業家精神とは何か

リクルートのDNA―起業家精神とは何か (角川oneテーマ21)

リクルートのDNA―起業家精神とは何か (角川oneテーマ21)

著者である江副浩正氏が学生起業家としてリクルート社を立ち上げ拡大していくサクセスストーリーに交えて、彼の理念や信条がざっくばらんに語られていて、読み物として非常に面白い一冊である。
江副浩正という人は、僕らの世代にとっては「あのリクルート事件で逮捕された人」というのが最も強いイメージではないだろうか。
江副さんのそんな残念な部分だけしか知らなかった僕のような人間が読んでも、ニュースでみていたあの事件の前に彼がどんなことをやってきた人なのかが、時系列を頭で整理するように入ってきて非常にわかりやすい。
そして彼はすごいことをやってきた人だったのだ!と認識を改められることになる。


「自分は何のとりえもない」と謙遜しているが、その謙虚な気持ちがあるからこそ、社員に多くの重要な仕事を任せることができ、そして、任された者はやりがいを持って仕事にはげむため、次々と成功していくのだろう。
イエローハット創業者の鍵山秀三郎氏の考えに非常によく似ていると感じた。
社員に海外で勉強してもらうための「遊学制度」や、亡くなった社員の遺族を助ける「遺族年金制度」などは、社員にとってはとても嬉しい制度。


良いと思ったらすぐ実行するのである。
かもめが翔んだ日」にはダイエーリクルートコスモスの話もいろいろ出てきたが、本書はそういったどろどろしたところは出てこず、リクルートのよいところをこれでもかと回顧し述べています。
僕は経営をしたことはありませんが、本書は経営をする人にとっては良い教科書のひとつになるのではないかなと思います。


本の中で、江副氏は、「自分は凡庸な人間である。
」と書いています。
経営者の才能があるとも思えない、とおっしゃってます。


優秀な社員が次の活躍の場を求めて転職・独立する、しかしそれ以上に優秀な人材が集まってくる・・人材の流動性が激しくても「軸がぶれない」経営の根本が読みとれる。
ギラギラした「起業家」・・江副さんにそんなイメージはない、本人曰く「カリスマ性もないし、話も下手」しかし、ビジネスの勘所をしっかり押さえていたこと、社員やパートナーの能力を発揮させる「場」を創る力があったことがベースになっている・・のではないだろうか。
「人材輩出企業」と評価される企業を創り上げたのは起業家・経営者冥利に尽きるだろう。
単に御輿に乗って「運営」していた経営者とは大きな違いを感じる。