毎日が自分との戦い―私の実践経営論

毎日が自分との戦い―私の実践経営論

毎日が自分との戦い―私の実践経営論

経営本というと、その時流行しいているジャーゴンを散りばめただけで無内容なアナリストの商売としての経営本か、その時持て囃されている社長のご自慢話を窺うものばかりで辟易していたが、そのような経営本とは一線を画している。
まさにタイトル副題どおり「私の実践経営論」となっている。
なぜ、カントリーリスクを避けるのか、敵対的買収をしないのか、株や土地などへの投資をしないのか、アナリストや広告会社とつるまないのかということが端的に金川千尋氏の人生経験から得られた血の通った実体験を通して理解させてくれる。
金川社長は直接的には語られていないが、冒頭の戦争体験のみならず端々に語られるガダルカナルの喩え、山本五十六氏の言の引用など、経営とは戦争に例えられるものであること、そして信越化学をただただ超一流の企業へと育て上げることは、金川千尋氏の敗戦体験に対する復讐戦であることがひしひしと感じられ、情緒的な書き方は一切なされていないにかかわらず恐ろしいまでの迫力ある一冊となっている。


そのために自分にも厳しくなるし、部下にも厳しくなる。
また、経営に関しては他社にも取引先にも厳しくなる。
競合先、取引先は生半可な気持ちで当たればこの人の厳しい考えに必ず負けると感じる。




つまり、本当に「当たり前のこと」が書いてあるのだ。
経営とは、変革のリーダーシップを実践すること、これにつきる。
ゴーンの『ルネッサンス』や三枝匡の一連の著作も併せて読めば、その意味するところが腑に落ちるだろう。


この不況の中、連続7期最高益更新するなど考えがたい力を発揮する経営者の考え方はいかなるものかわずかながら理解できた気がします。
本書に記載されている以上に金川社長の経営に対する考え方は厳しいと思いますが。
書いてあることは非常にわかりやすいのですが、実際それらのことを行動に移すのは非常に難しいものです。
今後もこの会社には期待したいです。