世界デフレは三度来る 上

世界デフレは三度来る 上 (講談社BIZ)

世界デフレは三度来る 上 (講談社BIZ)

19世紀、金銀の相対価格の変動を通じた「金本位国/銀本位国」の景気の変動。
貨幣的要因が、景気を大きく変動させることが、よく実感できました。
併せて「決して普遍的に最善な通貨制度というものがあるわけではない」ことも・・・。
「時間差をともなった支払いの手段」貨幣の代償・・・「契約が結ばれた時点における当事者の予想とは異なってくる」国内経済よりも国際為替の安定を優先させた金解禁・・・貨幣的要因が、景気を変動させることが自明視される中、新平価ではなく、旧平価での復帰に拘った井上準之助・・・「イギリスを初めとして、数多くの国が金本位制を離脱したことにより、日本一国だけが金本位制を維持することによる経済的利益はほとんどなくなった」「金本位制を離脱したイギリスを初めとする国々は、為替レートを大幅に減価させたから、いまだに金本位制を維持している日本の円は、そうした国の通貨に対して割高になる。


しかし、この本には各章ごとに、いたるところで驚かされる。
本当にこの本は、80年前の出来事を書いた本なのか?これからまさに世界が再び体験しようとしていることの預言書なのではないかと思わされる。
そして、いろんなアナリストの出している予想の多くがいかに的外れなものかがよくわかる。


著者の筆力には敬服する。
物語は、日本で言えば明治初頭の英国の経済情勢から始まる。
そして、金本位制、銀本位制、その併用といった貨幣制度を明治の伊藤、福沢、渋沢、松方等がどのように考えていたかにつながっていく。


それらはいつの時代にも必要である。
その多くは「安心する」ためのものであったとしても。
しかし、ここに唯一の例外が登場した。


「歴史は現在の鏡」というが、非常におもしろい読み物になっている。
マクロ経済のテキストを読むよりこの本を読むほうがずっと実態経済をマクロでどうとらえるかを体感できる。
本書を購入した目的は、日米の現在の経済状況をどうとらえるべきか? という疑問に対する手がかりを得るためであった。
十分に答えてくれた。